その男、武千代

38歳、モッズ系2児の父。

杏仁豆腐の個性

チェーン店ではない、街の中華屋さんが好きだ。

 

あなたの街にもないだろうか、

看板は黄色と赤で構成されてるいかにも「中華屋さん」的な感じで、

店員さんは片言の日本語で、

店員同士が中国語で雑談している、

店内のBGMが聞いたことのない中国語のポップス、

ランチがだいたい600円〜800円くらいで、

ご飯の大盛り無料だったりおかわり無料。

 

私はこういう中華屋さんのランチが好きなので職場の近くにないかリサーチして、常に2、3店舗抑えている。職場が変われば、中華屋さんを真っ先にリサーチする。

 

12年間にわたる社会人生活で、数々の中華屋さんに通った。

 

そして一つの共通点に気付いた。

 

どこの中華屋さんのランチにもメインのおかずの他に、

「卵スープ」

「ザーサイ」

「小鉢の杏仁豆腐」

が付いてくる。

 

街の中華屋さんのランチはほぼこのラインナップで揺るがない。

 

これはもはや、「走れば早い」とか、「叩くと痛い」とか、「飲むと潤う」とか、「ショートボブでクリープハイプが好きで浅野いにおが好きな女はメンヘラ」と同じレベルで揺るがない。

 

その中でもとりわけ、

「杏仁豆腐」

にはそのお店の個性が出やすい。

 

スプーンですくったのをそのまま小鉢に入れたみたいなお店、小鉢に杏仁豆腐の素を入れて固めて出しているお店もあれば、綺麗にひし形に切ってシロップに浸されていてクコの実が乗っている本格的なお店もある。

 

私クラスになると「杏仁豆腐」を見ればそのお店がどういうお店かわかる。「杏仁豆腐の個性」はすなわち「お店の個性」。

 

キチンと美味しい「杏仁豆腐」を出してくれるお店は間違いなくいい店だ。あくまで「ランチのおまけデザート」の杏仁豆腐をキチンと作っているお店を、私は信用せずにはいられない。夜に行っても美味しい中華が提供されるに違いない。

 

そう信じて、夜に行ってみると大して美味しくない中華が出てきてガッカリ、なんてこともある。

 

これだから中華屋さん巡りはやめられない。

だから私は今日も中華屋さんでランチを頼む。