ONE
大人になると、
ここは黙って話をしている人の邪魔をしてはいけない!
というターンがある。
先輩や上司がいる飲み会や、重役がいる会議やシチュエーションは様々だと思うが、黙って聞いていないといけないターンは間違い無く存在する。
素面の私は、その辺の空気は完璧に読める自信がある。なんなら、発言を求められても沈黙を貫く、強い意志を持ち合わせている。三下よ、お前とは話す必要がない、黙秘権が、私には権利としてあるのだ。速やかに、弁護士を呼びなさい。
しかし、お酒が入ると良くない。途端にその辺がポンコツになる。上司や先輩の話しを最後まで聞いていられない。
だいたい、上司や先輩の話を最後まで聞いていて、楽しかった試しがない。
最後まで話しを聞いて、だからこの話のオチはなんだったの、と胸ぐら掴んで問い詰めたい話がほとんどだ。狙ってそういう雰囲気にするわけでもない、ホントに、リアルに会話が宙に浮いて、虚空に消えるわけでもなく、飲み会の間、そんな話がたくさん空間を漂うことになる。だから若い人はみんな年寄りとお酒を飲みたくないんだ。話がつまらないから。全部お前らのせいだ、責任取って腹を切れ。
だから私は話しの間に茶々を入れてしまう。年甲斐もなく、上司や先輩に対して、この話、面白くなるんですよね、とオチを求めて茶々を入れてしまう。
良くないことはわかっている。嫌われる行為、だということも承知している。
でもやめられない。「アフター5」という貴重な時間の中で、満を持してスピーチされるのであれば、それ相応の面白さを提供してもらわないと困る。そこに上司や先輩という甘えはない。それくらいシビアな世界だから、「アフター5」って。
それが出来ないなら、真っ直ぐ帰って欲しい。家族と平和なひと時を過ごして欲しい。きっと、そこが貴方の居場所だから。
血で血を洗う世界、それがアフター5。