その男、武千代

38歳、モッズ系2児の父。

かつ丼梅のAセット

たまに行く「かつや」はいつ行っても結構混んでいる。

今日はランチのピークタイムを外して14時頃入店したのにカウンターがほぼ満席くらいに混んでいた。

ホントは隣に人がいない席にしたかったが並び的にも難しかったので、既に食事を始めていた老人の隣に座った。私のかつ丼梅のAセットが来る前には老人は食事を終えて隣が空くだろうと考えたからだ。

 

スマホアプリで漫画を読んでいたら1席隣のおじさんのご飯が運ばれてきて、少ししたら私のかつ丼梅のAセットが運ばれてきた。老人は思ったよりペースは遅いが食事を進めている。これなら私がセットのサラダを食べ終えた頃には老人は席を立つだろう。おじさんの隣に座らなくて正解だったと思った。

 

セットのサラダを食べ終え、かつ丼梅に着手し、豚汁小を啜っていると、1席隣のおじさんの食事が終わった。早い。驚くべき早さだ。

一方、隣の老人は全く食事を終える気配がない。私のかつ丼梅のAセットが来た時から進展が見られない。さらに満席に近かったカウンターのお客さんも食事を終え、会計に席を立ち始めていた。

 

いつしか店内カウンターには私と隣の老人しかいなくなった。

 

広いカウンターの隅で私と老人が並んで座っている。完全に席のチョイスを間違えた。想定の半分、いや3分の1のスピードで食事を進める老人。なんだか落ち着かない。カウンターで隣に人がいると落ち着かない。かつ丼梅のAセットをゆっくり落ち着いて味わえない。

このまま私のほうが先に食事を終えるのか、と思っていたら老人の食事が終わり、会計に立った。やっと落ち着いてかつ丼梅のAセットと向かい合えると思いホッとした。

 

老人が会計立ってしばらくして私も食事を終え、ゆっくりお茶を啜りながらスマホアプリで漫画を読んで、会計に立った。

 

レジに並ぶと、隣にいた老人が会計をしていた。

 

老人が会計に立ってだいぶ時間が経ったはずなのにまだ会計が終わっていなかった。よく見ると財布から小銭を探し出し、ぴったりのお会計にしようとしているようだった。その動作はゆっくりかつ慎重なもので、今まで見たお会計の中で最も時間の流れが緩やかだった。

私はしばらく老人の会計が終わるのを待ち、QUICPayでスマートに会計をして店を出た。

なんだか全ての歯車が微妙に噛み合わない、ちょっとハズレのランチタイムだった。